いきなりですが、江戸時代、拷問の一種として「塩抜きの刑」があったのはご存じですか?
体内の塩分濃度が低くなると、さまざまな不調が起こります。
塩は人間に欠かせません。
細胞・神経・筋肉を構成したり、新陳代謝の基礎機能を担ったりと、生命活動に重要な役割を果たしています。
減塩と言われるようになり、塩=悪というイメージが付いていますが、減塩ではなく「適塩」を心掛けてみませんか?
塩の種類・工程
海塩・湖塩(えんこ)・岩塩・藻塩と大きく四つに分けられます。
海塩 | 海水を何らかの方法で、濃縮・結晶させた塩 |
湖塩 | 塩分濃度の濃い湖で、採取される塩 死海・ウユニ塩湖が有名 |
岩塩 | 地殻変動で大地に囲まれた海が、長い歳月を経て地中で結晶化した塩 |
藻塩 | 海藻に海水をかけ流したり、一緒に煮詰めたりするなどして、海藻のエキスを含ませた日本独自の塩 |
種類はありますが、原点はすべて海。
海塩はもちろん岩塩も湖塩も、元はといえば海水から。
塩は、動物性でも、植物性でもなく、地球からの贈り物です。
製塩の工程 濃縮方法
塩を作るには、濃縮・結晶・仕上げという工程を経ます。
始めに海水を濃縮させます。
その方法は、平釜・立釜・逆浸透膜・イオン膜・溶解・浸漬(しんせき)と6つあります。
平釜 | 海水を非密閉の釜に入れて、煮詰めて濃縮させる方法 |
立釜 | 海水を密閉した釜に入れ、熱を加え濃縮させる方法 |
逆浸透膜 | 水以外の物質を通過させない特殊な性質を持つRO膜を使って、海水から淡水を分解し濃縮海水を得る方法 |
イオン膜 | 陽イオンと陰イオンだけを通す特殊な膜に電流を通すことで海水中にあるナトリウムイオンだけを集める方法 |
溶解 | 「再生加工塩」を製造する際、又は岩塩をつかして取り出す際に使用される方法で塩を真水又は海水に溶かすことで異物を除去させながら効率よく濃縮海水を得る方法。 |
浸漬 | 日本で最も古い濃縮方法で、基本的には「海藻を乾燥させて、塩を付いた状態にし、そこに海水をかけ流す工程を何度も繰り返して濃縮海水を作る」方法 |
製塩の工程 結晶
海水を濃縮させたら次は結晶をさせます。
方法は下記の6つの方法です。
天日 | 太陽と風の力だけで結晶させる方法。ゆっくり時間をかけて結晶するので、粒が大きくフレーク状の結晶ができやすい。 |
平釜 | 非密閉の釜に入れて煮詰めてから結晶させる方法。ぐつぐつ沸騰させると、細かい塩、沸騰させない場合は大きな粒の塩ができやすい。 |
立釜 | 密閉式の釜に入れて煮詰めて結晶させる方法。 |
噴霧乾燥 | 温かい部屋の中の高いところから、温風とともに、濃縮海水を噴霧し瞬間的に水分を蒸発させる方法。パウダー状の塩になる。 |
加熱ドラム | 熱したドラム状の金属板に濃縮海水を噴霧し瞬間的に水分を蒸発させる方法。パウダー状の塩が出来る。 |
採掘 | すでに結晶されている岩塩や湖塩を採取する方法。 |
製塩の工程 仕上げ
結晶させたら、次の工程は仕上げ。
焼成・粉砕・洗浄・造粒・混合と5種類の方法があります。
焼成 | 「焼塩」を作る工程のことで380℃を境に「高温焼成」「低温焼成」に分かれる。 |
粉砕 | 塩の結晶を砕くこと。岩塩や湖塩だけに行われると思われがちですが、海水塩も使いやすいように粉砕している場合も。 |
造粒 | 塩を何らかの方法で形にすること。パウダー状の塩を顆粒状にしたり、大きなタブレット状に形成したりする。 |
洗浄 | 主に輸入塩をに対して行われ、真水又は飽和塩水で塩を洗うことで、塩の表面に付着した不純物を除くことが出来る。 |
混合 | 塩の結晶に他のものを混ぜること。固結防止や栄養強化のほか、ナトリウム構成比の低い低ナトリウム塩を作る際に、マグネシウムやカリウム・カルシウムなどが添加される。 |
以上、各工程に多くの種類があることが分かります。
細かく表記しましたが、濃縮・結晶・仕上げの種類の組み合わせで塩が作られています。
大きく分けると精製塩・再生加工塩・天然塩
精製塩・再生加工塩・天然塩が分かりやすいかと思います。
精製塩は、塩化ナトリウム99%以上の高純度のもので、「食卓塩」「クッキングソルト」などが当たります。
再生加工塩は、「瀬戸のほんじお」「伯方の塩」「赤穂の天塩」など。
海に囲まれている日本には各地に天然塩が作られています。
台所にある塩を確認してみませんか?天然塩?それとも精製塩?
私が選ぶ塩
世界中でそれぞれ多くの塩が作られておりますが、私が選ぶのは、天然塩や自然塩とも呼ばれるものです。
裏面を見ると、栄養成分表示や、製造方法などの記載がされています。
製造方法で「イオン膜」「溶解」の文字があったら避けています。
なぜなら、この工程をされていた場合、天然塩ではないから。
イオン膜は電気分解、溶解は薬剤を使用しており安全性に疑問が残るからです(あくまでも個人的な考えです)
石垣の塩


その名の通り、石垣島で取れた海水で作られており、3日間釜で仕上げている、後味まろやかな旨味のある塩です。
工程は「逆浸透膜・平釜」
逆浸透膜は、科学的な工程なのかと、株式会社石垣の塩に問い合わせたところ、
「逆浸透膜は海水中の淡水だけを通過する特殊な膜で海水を濃くしており、水不足の離島などで海水から飲料水を得るのに使用されています」
そして「逆浸透膜を使い濃縮された海水は、石垣島のサンゴ礁が育んだミネラルはそのまま残っている」という返答を頂きました。
薬剤不使用、ミネラルも入っている天然塩です。
粒はやや細かく食材となじみやすく、水分量は標準。使いやすい塩です。
石垣の塩 (外部リンク)
粟国の塩(釜炊き)


海水は、沖縄県粟国島
工程は天日・平釜
水分量・しっとり、しょっぱさ・やや強め
一番リピートしている塩です。
粟国島に竹枝を使った塩田タワーに、海水をかけ流し1週間ほどかけて濃縮、薪で炊いた平釜で煮詰めて結晶させている、じっくりと丁寧に作られた塩です。
粟国の塩 外部リンク
雪塩


こちらも沖縄の海塩です。
海水は宮古島 工程は逆浸透膜・加熱ドラムとなっています。
水分量・かなり低く、しょっぱさ・弱い
名の通り雪のような、さらさらのパウダー状の形状の塩です。
濃縮した海水を、熱したドラムに噴射して瞬間的に水分を飛ばし、通常分離してしまうにがりを含んだまま結晶に仕上げています。
パウダー状のため、一般の塩より見た目で3倍の量をしようして ちょうどよい味になります。
私の使用法は、食材に直に塩をかけて食べたいときに使用しています。
浜御塩


長崎県対馬産の浜御塩(はまみしお)
壱岐対馬国定公園に認定され、天然の海藻が生い茂る清麗なる海水に恵まれています。
すこし粗目のお塩です。
長崎の海水を使い、工程は逆浸透膜・平釜。
こちらの会社は環境にも考慮しており、平釜で炊く際には、重油ボイラーから、対馬の森の間伐材から作られたチップを燃料にするバイオマスチップボイラーに変更し美味しい塩を作っています。
さまざまな塩を取り扱っており、世界各地の岩塩・海塩も取り扱っています。
株式会社白松(外部リンク)
最後に
常に同じ塩を使っているわけではなく、その時々で使う塩を変えています。
というのも、日本は海に囲まれている島国。
各地で天然の塩が作られています。
そして、出先や旅行先の、その土地ならではの塩を選び(原材料と工程を確認は必須)
各地の塩と出会い使う。
それもまた楽しみでもあります。
塩は地球の贈り物。
地球を大切にすることは自分の体も大切にすることでもあると感じています。
適塩を心掛けちょっとよい塩を生活に取り入れて、健康になりませんか?
※ SNSなどでは「天然の塩はどんどん取りましょう」という動きもありまが、 しかし体質・体型・年齢と、個々に違います。 自分の体に耳を傾けながら、試していくのが良いのではないでしょうか。 塩に限らずですが、良いものでも過度な摂取は控えましょう。
最後までご覧いただきありがとうございました。
参考図書 日本と世界の塩の図鑑 調味料の味わい
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